2章

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「やっべえ・・・・・・」  僕は慌てて駆け下りた。  スーツケースが壊れて死体の足なんかが飛び出していたら終わりだ。  恐る恐る覗き込むが、杞憂だった。ソフトタイプなのが不幸中の幸いだった。衝撃を吸収していたのだ。ただしソフトタイプならではの弱点も露呈した。  布で作られているために、中の死体が出した体液や血が滲んでしまうのだ。モスグリーン色だったスーツケースの下の部分が変色していた。  血を滴らせて、道路に痕を残しながら会場まで行ったら、きっと袋叩きでは済まないだろう。  とにかくやり直しである。  慎重に階段を上がっていくと、出口付近で僕はまたスーツケースどころか自分もろとも階段から落ちそうになった。  最初に運んだスーツケースが無くなっていたのだ。
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