2章

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 カーニバル会場に指定された街外れの古い西洋建築のレストランが見えてきたが、僕は無性に帰りたくなっていた。  ロメ郎に会ったら一体なんて言われるのだろう。罵倒で済むならいい方だ。無くなったスーツケースはロメ郎の物だし、中に入っていたのはロメ郎の友人だった。おまけに僕の指紋がべっとりである。確実に詰んでいた。 「中へどうぞ」建物の入口で立っている見慣れたドアマンが、屈強な体をねじらせて優しくエスコートしてくれた。ドアマンは僕が引きずっていたスーツケースを片手で軽々と持ち上げると、奥に消えていった。  会員たちは空調の効いた室内で椅子に座って人肉を心待ちにしているみたいだったが、まだ7割位しか揃っていなかった。僕は誰とも目を合わさずに、13番と書かれた椅子に向かって一直線である。後ろを歩く約束だったロメ郎は、既に隣の席に座っていた。 「ヤバイことになりました・・・・・・」僕はかすれるような小声で、正直にすべてを打ち明けた。 「・・・・・・マジかよ、どうすんだよ」ロメ郎は動揺していた。 「すみません」一応しおらしく謝っておいたが、あんな重たいものを2つも運ぶのは初めから無理だったんだよと、心の中でぼやいていた。 「まあ、仕方ない。そのことは後で考えよう」  僕の斜め向かいの席には、見慣れない人が座っていた。  新入りだろうか?   カーニバルには珍しく、女性である。  しかも見た目はかなり美人で、衆目を集めていた。
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