2章

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「おい、あの女をあまり見るな」ロメ郎は、か細い声で忠告した。 「何者なんですか?」僕は腹話術のように口を動かさずに訊いた。 「あのビッチはブローカーだ。あの美貌で男を落としてから、八つ裂きにして、その肉を売りさばいてる奴だ。見た目に騙されるなよ」  ロメ郎の助言とは裏腹に、僕の視線は女に吸い寄せられていった。ラフな格好で参加している参加者が多い中、場違いとも言える胸元の開いたセクシーな服を着ていた。胸を突き出すように背筋が伸びていて、やたらと姿勢がよく、それだけでも十分に女性的な魅力がアップしていた。  会員が全員集まると、照明が少しだけ落とされ、いよいよカーニバルが始まった。  仰向けにされたタトゥー男がテーブルの上に運ばれると、拍手喝采だった。  その後はいつも通り。  男の体はスタッフによって解体され、それぞれのお皿の上に盛り付けられていった。僕のお皿には特別に肩の肉が置かれた。  当たり障りのない会話を会員同士で楽しみながら、和やかにカーニバルは進んでいったが、1つだけいつもと違う部分があった。斜め向かい側に座っている女の存在だ。さりげなく視線を送ると、必ずと言ってもいいくらいに目が合うのだった。それはずっとこちらを見ているということ。数々の男がこうやって落とされていったのだろう。今日は僕がターゲットになってしまったのだろうか?   ロメ郎が心配そうに何度も僕の横顔を覗き込んでいることを、視界の隅に捉えていた。
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