2章

30/33

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
 女の言うとおりだ。僕の前に13番の席に座っていた人のことを、ロメ郎に聞いてみる価値はありそうだ。  考えれば考えるほど、ロメ郎が怪しいサイコパスに思えて仕方なかった。  今日だってそうだ。僕の後ろを付いてくるはずだったのに、先に来て涼しい顔で椅子に座っていた。  僕が重いスーツケースを引っ張っているのを遠くから観察し、目を離した瞬間を狙ってスーツケースを奪ったとしたらどうだろう。本当は死体を独り占めしたかったのなら、かなり回りくどい作戦だが合点がいく。  会場に戻るとロメ郎が心配そうに話しかけてきた。 「あの女に、何か吹き込まれただろ? シモン君が外に出た時に慌てた様子で女も一緒に外に出たからさ」 「・・・・・・はい」 「なんて言われた?」 「13番の席が空席だった理由を考えろって」包み隠さず打ち明けた。 「なるほど。上手いこと言うもんだな、あの女」ロメ郎は嬉しそうに笑っていた。 「実際、どうなんですか?」  ロメ郎はあっけらかんとした顔で当時のことを語り始めた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加