2章

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 ロメ郎は産声を上げたばかりであるカーニバルの初期メンバーだった。隣りに座ったのが自称「キング」という男。キングと言っても実際は暴力団の下っ端で、体には入れ墨の下書きだけが彫られ、金がなくなって中断してるような奴だったらしい。その頃はまだ互いの素性を探り合ってはいけないというルールが無く、電話番号を交換しあってカーニバル以外でも頻繁に会っていたという。  キングには口癖があった。「殺人で逮捕されることなんてない」というありがたいお言葉だ。殺人はある程度の計画性を持って実行に移せば、ほとんど逮捕されることなんてないのだという。実際にキングは過去に数十人の殺人を組から依頼され実行に移してきたが、職務質問さえされたことがなかった。 「逮捕されている連中は、頭に血が上って突発的に相手を殺害してしまうからだ。そういう場合は証拠が残ってしまう」とキングは力説していた。  もう一つは「現住所から遠く離れた場所で殺人をすること。得点を稼ぎたがる警察官は他県との連携が下手だからね」ということらしい。  ロメ郎とキングは金を出し合って中古のワゴン車を買い、遠くの集落に車を飛ばした。  都会は監視カメラが多く、狩りに不向きである。コンビニが一件くらいしかない町が手頃だった。あまりにも小さな村だと見慣れない車があるだけで住民の注意を集めてしまう。 「まずは死体になれること」そう言うとキングは車から飛び降りて、一件の民家に向かった。靴底は削り取ってツルツルだった。ズボンの裾は靴下の中に入れ、毛髪が落ちないように帽子を被っていた。服も繊維が落ちないナイロン製。手には使用後に燃やせる軍手を装着した。  チャイムを鳴らして「郵便です」と告げると無防備な主婦が出てきた。  キングの手が左右に動くと、主婦は喉から大量の血を吹き出し「ゴボゴボ」と音を立てながら倒れた。  キングはそれを担いで、ブルーシートの敷かれたワゴン車の荷台に載せると、何事もなかったかのように出発した。
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