2章

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「本当に捕まらないんですか?」助手席のロメ郎は震える声で聞いた。 「俺の一連の動作を見て、何か落ち度があったか? お前が刑事ならどこを調べる? タイヤの溝は靴と一緒でツルツルだ。監視カメラ? コンビニの前さえ走らなければ、こんな小さな町には存在しないよ」キングはまっすぐに前を向き、交通ルールをしっかりと守って車を走らせていた。  人里離れた森の中に車を停めると、キングは車内で死体の解体を始めた。あらかじめ用意しておいた青いバケツの中に、必要な部位と不必要な部位を分けていた。 「死体は土に埋めないほうがいい。余計な体力を使うし、骨が残ってしまう。ぶつ切りにして野生動物が多い場所に放置したほうが見つからないんだよ」  キングは得意げに語ると、最後に小さな手斧で頭部を半分にした。脳みそをスプーンで掻き出すと、残った頭蓋骨を更に小さく砕いた。  ロメ郎とキングは肉を食べたくなれば、このように殺人を繰り返した。  殺人の実行はほとんどがキングだった。  ロメ郎は逃げていたわけではなく、それが役割分担だった。ロメ郎の仕事は後片付け。毎回血だらけになる車内と殺害道具をきれいに清掃した。 「俺はこれをビジネスにするよ。がっぽり儲けるつもりだ。今度からさ、食べたい時に殺すんじゃなくて、1日に1人と決めて、人肉を効率よく生産していこうぜ」キングが近い将来の夢を打ち明けて帰ったのが、ロメ郎との最後だった。その後は音信不通になり、カーニバルにも顔を出さなくなった。
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