2章

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「キングはどこに行っちゃったんですかね?」僕はロメ郎に聞いた。 「分からない。ただひとつ言えるのは、人肉を売りさばくビジネスは、あの女と被っているということだ。結局のところカニバの数は、これから先、減ることはあっても増えることはないだろ? あのジャーキーを食べた人間だけなんだしさ。そうなると人肉を売りさばく客の数は限られてくるわけだ。客の奪い合いなんだよ。あの女はかなり早い段階でその事に気づいて、自分のシマを築いたんだ」 「あの女には何か巨大なバックがいるんですか? 1人でそんなことできるとは思えないけど・・・・・・」 「カニバ全体における女が占める割合は1割程度と言われている。でもこの1割が厄介なんだ。男のカニバが単独行動するのに対して、女は群で行動する傾向がある。集団で計画的に狩りを実行しているんだ。綿密に連絡を取り合ってね。しかも女の武器を平気で使ってくる。シモン君もすでに術中にハマってると思うよ。俺のことを疑ってるでしょ?」 「いや・・・・・・」僕は答えることができなかった。 「仕方ないさ。一度植え付けられた概念を消し去ることなんてできない。それに俺だって100%シモン君のことを信用しているわけではないよ。スーツケースを盗まれたと言ってたけど、本当はどこかに自分で隠したかもしれないしね」 「そんなことしませんよ」僕は呆れていた。 「でもそれを証明することはできないだろ」 「・・・・・・はい」  カーニバルが終わると、僕とロメ郎は一緒に外に出た。腹は満たされたものの、スッキリしない宴だった。二人とも口数が少なくなり、このまま別れたら、二度と会えないような気さえしていた。僕は空っぽになったスーツケースを引きずりながら、口を開いた。 「ところでさっきの女の名前は何なんですか? あだ名でもいいので」 「あだ名しか知らないよ。シャーリーだ」   名前なんて知ってどうする、と言われると思っていたが、ロメ郎はあっさりと教えてくれた。あとはもう自己責任ということなのだろう。
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