3章

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 なによりも法律が激変である。  カニバによる殺人事件が後を絶たないことから、自然死や病死した遺体の一部をカニバに提供することが義務付けられたのだ。有権者は増税された時よりも反発した。毎日のようにデモ行進が行われたが、与党は押し通した。  こうして僕たちは、殺人というリスクを回避して死肉にありつけるようになったのだ。とはいっても、美味しい肉を食べられることなんてほとんどない。国から配給される肉と比べたら、病院食がフレンチに感じるほどだ。 殺人事件は激減したが、全く無くなったかというと、そうではない。配給される肉に満足出来ないカニバは、リスクを冒してでも殺人を繰り返しているし、金のある連中は独自のルートで肉を仕入れている。 そういった一部のカニバは、逮捕されても通常の刑務所に収監することができなかった。一般の受刑者を食べてしまう危険性があるからだ。結局、別の刑務所が用意されることになった。  カーニバルのほとんどが摘発された。僕が参加していたカーニバルも例外ではなく、数人の逮捕者が出た。食事の最中に警察が突入してきた際に、僕とロメ郎は別方向に逃走し、二度と落ち合うことはなかった。
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