3章

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カークは最短で1週間のコースがあり、最長で1年だ。僕は夏休みを利用して1ヶ月間のコースを選んだ。最寄りのカークは避けて、少し離れた場所を選んだ。人目を気にしながら道を歩き、ラブホテルに入るかのように飛び込む。  建物は廃病院をそのまま再利用しているらしく、壁にはイタズラ書きが残され、少ない蛍光灯は点滅していた。壁は穴だらけで、廊下にはバイクのタイヤ痕が残されていた。国の予算など何も付かなかったのだろう。  数人の職員とすれ違ったが、プロテクターを装着していた。受付窓口は指一本がギリギリ入るくらいの隙間から紙を出し入れして意思の疎通を図るしかない。世間のカニバに対する評価などこんなものだ。扱いはシリアルキラーと一緒である。  僕は告げられた番号の部屋を見つけるために、階段で2階に上がった。エレベーターには故障中の紙が貼られている。密室を作りたくないのだろう。どの部屋もドアは開けっ放しで、目的の部屋を見つけると中を覗き込んだ。時間よりも早めに来たつもりだったが、既に他のカニバたちが着席していた。  僕以外の3人は全員が男で、見覚えのある顔はいない。椅子に座ると、すぐにカウンセラーが入室した。初老の男性で、控えめに服の下にプロテクターを装着しているみたいだったが、クッキリと浮き出ていた。
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