3章

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「え?と、みなさん初めまして。今日からみなさんのカウンセリングを担当します香坂博之です。よろしくお願いします」香坂がしわがれた声で頭を下げると、僕たちは釣られて頭を下げていた。 「最初にそれぞれ自己紹介をしましょうか。名前は仮名でも結構です。別に本名や過去の殺人などを告白しても平気ですよ。私たちカウンセラーには守秘義務がありますので。絶対に外部には漏れません」  そんな言葉を信じる奴なんているわけがない。僕は使い古した「シモン」を名乗るべきか悩んでいた。 「私の名前は生島浩一郎です。年齢は48です。以前にも1ヶ月コースを受けたことがあるのですが、最近また頭の中が肉で満たされる日が多くなってきたので、改めて受けることにしました。よろしくお願いします」  見るからに真面目そうな黒縁メガネをしている生島が照れながら自己紹介を済ませると、拍手が始まり、僕も慌てて手を叩いた。 「え?、風間修平と申します。68歳です。この中では最年長だと思います。最近になって孫が生まれまして、孫が大きくなった時にお爺ちゃんがカニバだと分かったらどういう反応するのか不安になり・・・・・・先日、人肉の配給を断りまして、ここに来ました。よろしくお願いいたします」  風間は見るからに人の良さそうな風貌で、応援したくなる存在だ。 「尾崎雄太です。29歳です。今度結婚することになったのですが、相手は僕がカニバであることを知りません。なのでこのままカニバを卒業したくて来ました。よろしくお願いいたします」  尾崎は爽やかな印象だった。パリッとした白いシャツを着こなし、短い頭髪も好印象だ。
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