3章

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 いよいよ僕の番が回ってきたが、他の3人の名前は本名なのだろうか?   僕だけがシモンと名乗っても浮いてしまいそうで心配だった。  三人共見るからに真面目で、カーニバルに出入りしていたことを告白なんてしたものなら、白い目で見られそうである。  実際、世間の認識はそうなっている。ほとんどのカニバはカーニバルになんて一度も参加したことがないのだ。あれは数パーセントのジャンキーの集合体であり、犯罪者の掃き溜めなのだ。今になって僕はとてつもない疎外感を味わっていた。来る場所を間違ったのではないだろうか? 僕が行くべき場所は刑務所なのだ。 「どうぞ」カウンセラーの香坂が促してきた。  ここまで来て嘘をついて帰っても仕方ない。これから毎日のように足を運ぶ場所なのだ。 「僕の名前は・・・・・・シモンと呼んで下さい。年齢は21才です・・・・・・過去にカーニバルに参加していました」  その言葉を口にした瞬間、空気が変わった。  他の3人の表情や仕草ですぐに分かった。カウンセラーの香坂だけは、顔色を変えず、僕にまっすぐな視線を注いできた。 「おこがましいかもしれませんけど、元の正常な生活に戻りたくてここに来ました。よろしくお願いいたします」  あんなに全力で拍手をしたのに、僕にだけ無しだった。
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