3章

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「わざわざ麻薬中毒者を殺して作ったんですか?」 「そんな面倒なことはしないわよ。これはカニバの肉で作ったの」 「それならカーニバルで食べたことありますよ」僕はそっぽを向いた。 「あの頃とは違うんだって。世の中はどんどん変わっていってるの。過激派の人たちは、もう一般人には興味ないわ。人肉を食べ続けて旨みが蓄積されたカニバの肉を食べるのが今は主流よ。まあ、仲間割れって奴だけどね」 「ロメ郎さんが言った通りになってきましたね。カニバは共食いして消えてゆく運命なんですよ」 「ロメ郎ね・・・・・・懐かしい名前を聞いたわ。君は上手く立ち回ったわね。罪を全部ロメ郎に押し付けて刑務所送りにしてさ」 「押しつけてなんかいないですよ!」僕が声を張り上げると、シャーリーは周囲を気にする素振りを見せた。 「とりあえずこのジャーキーは君にあげる。いらなかったら捨てていいよ・・・・・・それよりもさ、面白いことを教えてあげようか?」 「あなたの言うことは嘘ばかりだし、面白かったことなんて一度もない」 「じゃあ嘘だと思って聞いて。実はね、一般の人がカニバの肉を食べると、カニバになっちゃうって知ってた?」 「・・・・・・」僕は首を横に振った。 「ゾンビ映画と真逆よね。ゾンビに食べられてゾンビになるんじゃなくて、ゾンビを食べてゾンビになるんだからさ」 「・・・・・・実際にいるんですか? なった人」僕の心はとっくに彼女に噛まれていた。 「いるわよ。私は第二世代と呼んでる。この美味しいジャーキーを世界に広めていけば、世界中カニバだらけ。すごいと思わない?」  最後にシャーリーは僕の手のひらの中に、小袋を押し込んだ。突き返す事もできたのに、僕の指はわずかに力を緩めて、空間を作っていた。
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