3章

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 翌日、カークに行くと、時間が来ても部屋には僕1人だった。  他の3人は結局来ることはなかった。  マン・ツー・マンになってしまったカウンセラーの香坂は、「いつものことですよ」と笑いながら言った。 「みんな途中でリタイアするんですか?」 「今回はちょっと酷いけど、よくあることです。ここから一歩でも外に出たら、あいつらが待ち構えているでしょ。最近は特に露骨に活動してる」 「売り子の女たちですね」 「そう。あいつらは金と股で国家権力を味方につけているから余計にタチが悪い。警察すら味方につけている」 「やっぱり警察はカニバとズブズブですか?」 「酷いもんさ。金さえ渡せば新鮮な死体だってくれると思うよ」  二人きりの濃密なカウンセリングが終わって施設から出ると、予想通りシャーリーが待ち伏せしていた。胸を強調した娼婦のような衣装に身を包み、100メートルくらい離れていても存在が分かりそうな、強烈な香水の匂いを漂わせていた。 「暇なんですか?」僕は小馬鹿にした口調で言葉を掛けた。 「こんな施設から出てきた人に言われたくないわ」シャーリーは大口を開けて笑い、セレブらしいきれいな歯並びを見せつけていた。 「肉屋の幹部なんですよね? 現場主義ってやつですか」 「まあね。ところで昨日のジャーキー食べた? 美味しかったでしょ」 「・・・・・・まあ」 「もっと欲しかったら売ってあげるわよ。昨日シモン君と一緒に建物から出てきた3人は、あっという間にリピーターになったわ。箱買いした人もいる」 「いいえ、結構です」僕はきっぱりと断ってから駅の方向に向かって歩いた。 「ちょっと待ってよ! 今日は相談があって来たの」シャーリーはハイヒールの音を鳴らしながら後を追いかけてきた。
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