3章

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「あの雑居ビルの2階にあるホストクラブが陳の経営。この時間ならもう集まってるはず」 運転席でハンドルを握りながらシャーリーは話していた。  僕は助手席で陳の写っている写真を眺めていた。 「陳はもちろん、ホストクラブで働いている男たちはみんなカニバだから、そのつもりで。客の女から金を騙し取って、さらに解体して肉まで売りさばいてる連中なんだけど、本当は無視してもいいレベルの小物なんだけど、最近、ウチで働いている女の子がここで解体されたのよ。さすがに見て見ぬふりはできない状態なわけ。シマも被ってるし」 「どっちもどっちですけどね」僕は目を細めながら、ビルの二階を見上げた。 「シモン君はカーニバルの時に調達してくるのが屈強な男ばかりだったし、シモン君自体も会う度に体がどんどん大きくなっていったよね」 「一応、鍛えていたんで・・・・・・」 「眉ひとつ動かさないで人を殺せるんでしょ」 「あの頃の僕は狂っていましたから。でも殺しは今日が最後です」 「みんなそう言うのよ。今日が最後って」 「稼ぐだけ稼いで、あなたとの関係を今日で終わりにしたいです」 「死んでも悔いが残らないように、とりあえず最後にこの肉を食べなさい。私が扱っている中で、最高級の人肉」  シャーリーはブロック状の干し肉を手渡してきた。僕は軽く匂いを嗅いでから口の中にそれを放り込むと、美味さに圧倒され、すぐに言葉が見つからないほどだった。 「どう? オイシイでしょう」シャーリーは憎らしいほどにドヤ顔だ。 「・・・・・・どういう肉ですか、これ」 「オリンピックに出たことのあるスポーツ選手の肉。現役バリバリなのに事故で脳死状態になったの。チューブにつながれて体力が衰える前に肉体を家族から買ったのよ」 「売ってくれたんですか・・・・・・」 「人間はカネ次第なのよ」  一体どんなスポーツをしていた選手なのだろう。体の奥から力が湧き出てくるのが分かった。心臓がうるさいくらいに高鳴る。なぜだか下半身にあるアレが大きくなってしまった。
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