1章

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 世間的には相当マイナーな零細企業であったが、僕にとっては国営企業と肩を並べる存在。しかし、ニュースの内容はただそれだけ。続報は無かった。  一体何の肉が使われていたんだ? ネットは荒れに荒れ、マスコミは報道規制を敷いていると噂された。  そこはネット社会。すぐさま内部情報がリークされた。 「私は人肉を加工していました。某独裁国家から人体が定期的に大量に船で運ばれてきたんです。頭部はなく、皮膚もありませんでした。お腹は空っぽで、内臓は生きてるうちに臓器移植目的で抜かれていたと思います。ジャーキー用に肉を削ぎ落とした後の人骨は、粉砕機で粉々にして苛性ソーダで溶かしてから下水に流しました。一応、手を合わせながら鼻歌でお経を読み上げて下水に流していましたが、効果があったかどうかは分かりません」  頭部と皮膚を失った人間が透明なビニールに入れられたまま、冷凍庫で大量に逆さ吊りにされている写真が一緒に貼られると、それは一瞬にして世界中に拡散された。日本を訪れる観光客の数が減るほどのインパクトだった。  時を同じくして、1件の猟奇的殺人事件が世間の注目を静かに集めていた。  加害者はどこにでもいる婚期を逃した38歳のサラリーマン。  彼は面識のない道行く人を無作為に拉致して殺害。  その肉体を食べていたのだ。  独身男性にしては大きすぎる冷蔵庫の中には、お皿に盛られた生肉がビールと一緒に冷やされていた。  精神鑑定を行っても異常はなく、スピード判決で死刑が言い渡された。  この2つの事件を境に、全国で行方不明者が続出することになる。  猟奇的な殺人事件が毎日のように新聞やテレビを騒がし、感覚が麻痺するほどだった。
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