3章

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「おはようございま?す」  若い男の声が店の入口から聞こえてきた。姿を確認することはできないが、声色から下っ端のホストと予想。先輩よりも早く出勤して、掃除でもしないといけないのだろう。 「あれ・・・・・・支配人、どうしたんですか? それって血ですか?」  若い声がどんどん近づいてきた。僕とオーナーは互いの顔を見ていた。支配人がこのまま厨房から出ていくことを二人とも望んでいた。そしてそれは願い通りになる。支配人は唸り声をあげながら新人ホストの声に引き寄せられていった。 「仮装パーティー的なやつですか?」状況を何も把握していないホストは、危機意識のかけらもない非武装な言葉を吐いてから、叫び声をあげた。  支配人はホストの喉に噛みつき、肉を噛みちぎっていた。喉にポッカリと開いた穴からは大量の血が吹き出し、支配人はそこに口を当てて、音を立てながら飲み込んでいた。  ホストは一度反撃したが、よほど上下関係が厳しいのか、それは幼い子供に注意する時に使うような力のこもっていないビンタに近かった。  支配人は喉の渇きを血で癒やすと、傷口に両手の指を押し込んで左右に広げた。ホストは目をキョロキョロさせながら、支配人の髪の毛を鷲掴みにしたが、すでに力は入らなくなっていた。
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