3章

23/25

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
 僕はなんて意志の弱い人間なのだろう。  今、目の前にいる変体した3人のカニバたちの生命力の味を知りたくなってしまった。脈打つ筋肉や心臓は一体どんな味がするのだろう。調理なんて一切不要だ。新鮮さが最大の味付け。傷口に顔を沈めて堪能したい。  目の前で真っ二つになった若いホストの体の内側に腕を突っ込んで、真っ赤な肉片を握りしめた。手の中でそれは動いていた。口の中に押し込むようにして食った。  一体なぜこんな美味いものを人は食べないのだろう? 純粋な疑問だ。  体中に浴びた返り血を水で洗い流すのがもったいなかった。鉄臭さが心地よい。屠殺場でヘッドスライディングでもしたかのように、服は血を滴らせるくらい濡れて体にへばり付き、靴の中にまで入り込み、歩く度にぐちゅぐちゅと音を立てた。  血の足跡を残しながら厨房から出ると、僕は足早に店を出てエレベーターを待った。まだ昼時であるため、ビル内のほとんどのテナントは閉まっている。人にばったりと出くわすことはないだろう。監視カメラは事前に破壊されていた。誰も乗っていないエレベーターに乗り込むと1階のボタンを人差し指の第二関節でノックした。  1階に到着し、扉が開いた瞬間に人が立っていた場合、誰でもいいから口封じに首を切り裂いてやろうと思っていた。そして開いた瞬間、人影を察知し、僕はナイフを振りかぶった。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加