3章

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「よく来たね。もう来ないと思ってたよ」カウンセラーの香坂は笑顔だった。 「ええ、まあ」  他の3人の椅子は撤去されていた。2人で使用するには広すぎる部屋で、僕とカウンセラーの香坂は向かい合って椅子に座っていた。 「調子はどう?」香坂は部屋中に響く通る声で聞いてきた。 「何とも言えないです」 「食べたでしょ? 肉」 「・・・・・・はい」僕は正直に告げた。 「肌の色ツヤを見たら分かるよ。どこで手に入れたの?」 「サンプルですよ。外で配ってる」 「あんなサンプル程度では満たされないでしょ。歯に挟まって終わるくらいの量しかないだろうし」 「そんなことないですよ。堪能しました」 「ふ?ん、まあいいや。ここに来ただけ偉いよ。まだ止めたい気持ちが残っているのだろうし」 「今日はどんな話をしてくれるんですか?」 「あまり話すことはないよ。短い言葉しか用意していない」 「というと?」  無数の足音が廊下から聞こえてきたと思うと、それらは僕のいる部屋の中になだれ込み、あっという間に囲んできたのだった。 「逮捕・・・・・・」香坂は寂しそうに僕を見ていた。 「あの女がチクったのか?」僕はシャーリーが高笑いしている顔を思い浮かべながら、刑事の1人に尋ねた。 「あんな女を信用するお前がバカなんだよ」刑事はそう言いながら手錠をはめた。 「警察はあいつとグルなんだろ?」 「一部にそういう連中がいるとは聞くが、そいつらも捜査の対象だ。身内だからと言って容赦はしないよ。あんまり警察を舐めないように。お前は面倒くさい仕事をこなしただけで、オイシイところは全部、あの女たちが持っていったんだ」  僕は抵抗する気力も失せていた。部屋に1人残された香坂を見ると、寂しそうな目で僕を見送っていた。
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