4章

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 カニバ専用刑務所。  かつて数十世帯の島民が暮らしていたが、地震と津波により避難し、以後誰も住まなくなった島を改造して建てられた巨大な収容施設である。  海に隔てられているとはいえ、遠泳に自信がある人なら、泳いで渡ることも可能であるため、刑務所の建設は未だに地域住民の批判に晒され続けている。  朽ち果てた住宅はそのまま放置され、島の中心部にあった水産加工場を改造して刑務所は造られた。  以前は養殖業が盛んだったこともあり、海には島を囲むようにして巨大な柵が今も残る。それを補強して、無数のサメが放流されていた。  海に飛び込む囚人を迅速に捕まえる寡黙な看守の役割を果たしているのだ。  僕を含めた30人前後のカニバたちは、後ろ手に手錠をかけられたまま船に乗せられた。  海に浮いているのが不思議なくらいに錆びついたフェリーだ。かつて本土と島を行き来していた小さな定期船を再利用しているらしい。座席はシミだらけだが、消毒液の匂いだけは新しく、壁には色あせたポスターが貼られたままになっていた。
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