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「ここにいるサメたちは人間の味を覚えているからな。お前たちカニバと同じだよ。人肉しか受け付けない体になっているんだ」
それまで無表情だった警官は、少しだけ笑みを浮かべていたが、僕たちの顔は完全に凍りついていた。
船酔いする暇もないくらい、あっという間に島に到着した。飾り気のない簡易なフェリー乗り場が出迎えてくれた。
埠頭には中年の男が立っていた。
「おいコラ! ガードレールの後ろに下がれ、クソ野郎が!」
船に一緒に乗っていた警官が埠頭の男に罵声を浴びせると、男は素直に命令に従った。海岸沿いに作られた道路にはグニャグニャに曲がり錆びついたガードレールが残されていたが、男はそれをまたぐと、遠くからこちらの様子を伺っていた。
「あの人は誰ですか?」僕は近くにいた警官に質問した。
「カニバだよ」
「え? 刑務所は?」
「刑務所は島の中心にあるが、機能していない。この島はカニバの治外法権になってしまったんだ。俺達はそこに食料を運んでいるだけ」
「食料なんて積んでいましたっけ?」
「積んでるだろ。お前たちのことだよ」
「・・・・・・面白いジョークですね」
きっと嘘発見器にかけても針は何も振れないだろう。警官はさらりと言い切っていた。タラップ付近には銃を構えた警官と手錠の鍵を持った警官がスタンバイした。
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