4章

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「よーし、今から手錠の鍵を外すから、お前たちは後ろを振り向かずにタラップを渡って船を降りろ。少しでも振り向いたら、頭を撃ち抜いてサメのエサにする。それから数人は物資を下ろすのを手伝ってくれ」  僕は列に並んで順番を待った。眉ひとつ動かさずにカニバを海に落とす連中だ。脅しは本当なのだろう。  前列のカニバ達は命令に従い、まっすぐに島を見つめながら、ダンボールを抱えて船から降りていった。  いよいよ僕の番だった。カチャッと金属音が背後から聞こえると、両腕は開放された。手首には赤い痕が残っていた。段ボール箱を渡されると、慎重に錆びついたタラップを渡った。  コンクリートでできた埠頭は、ジジイの肌の角質みたいに無数のヒビ割れがあり、そこからは雑草が生えていた。かつてあったフェリーターミナルは津波によって骨組みだけになっている。住宅らしき残骸が沿岸にあったが、人が住むことは無理であろう。屋根は剥がれ、割れた窓からは土砂がクソみたいに吐き出されていた。  最後の1人が降りるやいなや、船はすぐに離岸。  警官たちはわざとらしく手を振っていたが、それに応じるカニバは1人もいなかった。
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