4章

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「小さな島ですから、1時間もあれば一周できます。沿岸には民家が建っていますけど、住むには適していないです。中は土砂だらけですから。でも住みたければ住んでいいんですよ。夜は星空を見ながら眠ることができますから」  森の中には舗装された道路が残されていたが、今はもうその上を車が走ることはないだろう。道路は変形し、埠頭同様にひび割れから雑草が顔を覗かせていた。  道路を突き進むとコンクリート製の刑務所がその無骨な姿を現した。  刑務所の代名詞である高い塀はどこにも無い。  美観などまるで考慮されていない外観だった。  巨大な四角いコンクリートと無数に並ぶ小さな格子窓は、都会にそびえ立つ高層ビルが横に倒れたみたいだった。 「この5階建ての刑務所は、およそ5000人を収容できますが、実際は1000人程度しかいません」  刑務所に隣接して、巨大な施設があった。見るからに経年劣化した壁には緑色のツタが巻き付き、壁に開いた穴を鉄板で修復した形跡があるが、鉄板自体が茶色く錆びつき、そこにも穴が開いていた。 「刑務所よりも先に隣の施設を案内しましょう。みなさんも気になるでしょ。元は水産加工場でした。ここも津波の影響を受けたみたいなのですが、今もこうして利用することができてます」
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