1章

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 人々は僕たちのことを「カニバ」と呼んだ。  カニバリズム(人肉嗜食)から来ているらしい。  安直なネーミングだが、すぐに広まった。  そして見た目は普通の人間だが、常に人肉を欲している異常者としてのレッテルを、僕たちに貼ることに成功した。  ゾンビみたいに噛むことによって他人にウィルスを感染させるわけではなく、吸血鬼みたいに夜行性でもない。  わざわざ頭部を撃ち抜かなくても腹をナイフで刺せば軽く死んでしまう軟弱な人間。  僕たちは普通のライフスタイルを送ろうと思えば送れるのだ。  ただ、脳内では常に人肉への渇求と戦っている、中毒患者。  僕は途方に暮れていた。勉強は全く手につかなくなり、このままでは二浪は確実と思われた。 「せめて一口だけでもいいから、人肉を食べたい。そうすれば勉強ができる」と本気で思っていた。  ジャーキーを食べていたのは、もちろん僕だけではない。  全国に数え切れないほどのカニバがいるはずなのだ。  職業や年齢はバラバラで、中にはきっとタレントや政治家も含まれているだろう。  彼らはどうやって欲望を満たしているのだろう?   全員が犯罪に手を染めているはずがないのだ。  きっと独自の入手ルートを構築している。  そう考えると浪人生という学生でも社会人でもない中途半端な立ち位置が、より一層不甲斐なく身に染みるのであった。
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