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「このダンボールって何が入ってるんですか?」僕は加持選手に質問した。
「援助物資だよ。本土にいる家族やカニバたちが厚意で送ってくれるんだ。中身は警察でチェックされているから、武器になりそうなものは何も入っていないよ。ほとんどが衣類とか寝具だ。5階の人達から優先的に箱の中のモノを選ぶことができるんだ。1階に下りてきた時には、ただの空のダンボールになってるよ」
僕は加持選手の体中に残された傷を見ていた。現役の頃よりも傷が増えている気がした。
「加持選手ですよね?」僕は上目使いで聞いた。
「・・・・・・僕のことを知っている人に初めて会ったよ。でもここでは仲間なんて作ったら駄目だよ。明日には戦うことになるかもしれないんだから」
「はい・・・・・・」
「それじゃあ、僕に付いてきて」加持選手は寂しそうな目をしながら、歩いていった。「岩城さんから既に色々と聞かされていると思うけど、僕からも説明させてもらうよ。とりあえずあそこが競技場だ」
加持選手が指差す場所は、刑務所の中心部だった。1階から5階までが吹き抜けになっている広場だが、1階部分には直径10メートル近くある半球の檻が造られていた。その中はコンクリートの色が黒く変色してた。人間の血を吸い続けたのだろう。
ディナーショーが日々行われている場所であることは、説明されなくても、すぐにそこだと理解することができたであろう。
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