4章

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 彼らは見るからに強そうである。1階にいる貧相な男たちとは違い、体は筋肉で覆われ、肌の艶もいい。僕がダンボールを床に置くと、彼らは箱をひっくり返してから物色していた。 「あそこのスキンヘッドのおっさんは、武闘派の暴力団の元組長だよ。みんな組長と呼んでる」加持選手は声を潜めながら耳打ちしてきた。 「組長ですか・・・・・・」 「その隣の大男は元自衛官で特殊部隊に所属していた人だ。あだ名は軍人」 「強そうですね」 「ああ。負けなしだ・・・・・・みんなそうだけどね。一度でも負けたらここにいない。それから奥にいる細い男。あいつはガリと呼ばれている」 「強そうに見えないですね」 「あいつはずっと5階にいるけど、まだ一度も戦ったことがないんだ。ホント運の良い奴さ。中にはそういう奴もいる」  僕は休憩所にいるカニバの顔を一つ一つ確認していた。角度的に見えなければ、さりげなく前に回り込んでチェックした。 「どうした? 誰か探している人でもいるのか?」加持選手は不思議そうに言った。 「ここにいる人達は、5階の全員ですか?」 「いいや、半分もいないよ」 「そうですか・・・・・・昔の知り合いが、もしかしたらいるかなと思って」 「何ていう名前?」 「本名は知りませんけど、あだ名はロメ郎でした」 「・・・・・・君は、ロメ郎と知り合いなの?」加持選手の顔色があからさまに変化した。 「一緒にカーニバルに参加していたんです」 「そうなんだ・・・・・・岩城さんから色々と聞かされていると思うけど、この刑務所は過去に革命が起きたんだよ。刑務官たちは追放され、そして今のディナーショーのルールが作られた。その革命の中心にいたのがロメ郎だ」 「そうだったんですか・・・・・・」僕の心拍数は跳ね上がっていた。 「でも当時の革命メンバーのほとんどが、自分たちの作ったルールの中で敗れていったよ。今も生き延びているのはロメ郎だけだ」 「ロメさん、強くなっているんですね・・・・・・」 「強いも何も、あの人は散弾銃を使うから、彼と対戦が決まった時点で終わりなんだよ」 「さ、散弾銃?」
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