4章

20/40
前へ
/110ページ
次へ
 ディナーショーまで時間があるため、僕は一度刑務所を抜け出して島を散策することにした。まだ誰にも発見されていない手付かずの建物を見つけ出して、武器を発掘するのが目的だった。  加工場の前を横切ると、強烈な悪臭が漂っている。一度慣れたはずだったが、やはり臭いものは臭い。シャツの襟を伸ばして鼻を押さえながら建物の裏側に行くと、人骨の巨大な山があった。穴を掘って埋めていたような形跡があるが、今はもう面倒くさくなって、そのまま捨てているのだろう。 「おい、何してる」加工場から出てきた全身血だらけの男に声をかけられた。 「ちょっと、探検ごっこです」僕の口からは、とっさに嘘が漏れていた。 「新人か?」 「はい」 「武器でも探しているのか?」 「まあ、そんなところです」 「今夜配給される肉を全部オレにくれるなら、木の棒をこの包丁で削って槍にしてやるぞ?」男は痩せ細った体に似合わない大きな声で交渉してきた。 「いいや、結構です」僕は迷うことなく提案を断った。 「俺も昔は5階で生活してたんだよ。でも今は戦うことを止めてここで安定した生活を送っている。毎日怯えながら浅い眠りに就く生活とは違って、いいもんだぞ? いい肉は貰えないけどな」  男を無視して森の中に入った。港は島の南側にあった。  住宅は島のあちこちに点在しているが、主に北側に集中しているみたいだった。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加