4章

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 港から刑務所までは舗装された道路があったが、刑務所から北に続く道は舗装されていなかった。雑草が膝の高さまで生い茂り、注意して歩かなければ、草に隠れた石などを踏みつけて、足首を痛めそうだった。  北側にたどり着くと、廃墟マニアには堪らない光景が広がっていた。朽ち果てた住宅は土と雑草で覆われ、自然の中に一体化していた。  小さな役場や、交番、そしてすこし大きめの体育館などもある。車が数台あったが、そのほとんどがひっくり返っていた。津波に流された小さな漁船が住宅地の道路を塞いでいる。船底には巨大な穴が開き、素人が修理するのは難しいであろう。  僕以外にも数人のカニバが既にいた。彼らに廃墟を物色している様子はない。岩城師範代が話していたドロップアウト組だろうか? 「何しているんですか?」僕は1番近くにいた髭を蓄えた男に話しかけた。 「まずは自分から言えよ」髭はムッとした顔で僕を睨みつけた。 「あ、すみません。武器になりそうなものがないか、探していました」 「お前は新人か?」 「そうです・・・・・・」 「武器なんてあるわけないだろ。島に来るのが3年遅いよ」 「もっと早く来れたら良かったです」僕はとぼけながら通り過ぎようとした。 「・・・・・・強力な武器がほしければ、海の中に潜ることだ。以前ここにいた刑務官たちが革命で逃げた時に、銃を海の中に落としたと噂されているんだ」男は口元が髭で隠れているため口角が分かりにくかったが、目尻には笑い皺ができていた。  男はそのまま踵を返し、体育館の中に消えていった。
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