4章

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 住宅地を抜けると、目と鼻の先に海があった。島の南側はコンクリートで囲まれた人工的な海岸だったが、北側は砂浜こそないが、海水浴が楽しめそうな岩肌の海岸である。  波の音と共に、色とりどりの石油製品が大量に打ち上げられていた。外国語のラベルが貼られた製品も多いが、何の容器なのかは、色と形状で容易に予想できた。  ゴミに混じり、養殖されている巨大なサメの死骸があった。黒く変色し、針で一突きすれば爆発しそうなくらいにガスで膨張している。 「なにしてんの?」突然背後から男の声がすると、僕は飛び上がって、バランスを崩していた。完全に無警戒だった。まったく足音を立てずに背後に接近されていた。  振り向くと、そこにはロメ郎が笑顔で立っていた。 「・・・・・・久しぶりです」僕は複雑な表情で挨拶をした。 「ったく、なに島流しされてんだよ」  ロメ郎は以前よりも頬がやつれていたが、不健康な痩せ方ではなかった。肌は日に焼けて黒く、頭は坊主だ。減量中のボクサーみたいに体は引き締まっている。背中には噂の散弾銃が担がれていた。 「ヘマしました・・・・・・」僕は苦笑いを浮かべた。 「あの女のせいだろ。シャーリーだっけ?」 「その通りです」 「だから言っただろ、関わるなって」ロメ郎は足元に転がっている洗濯洗剤の容器を拾い上げた。 「ロメさんは、ここではかなり有名人みたいですね」 「まあね。こんな場所で名を挙げても仕方ないんだけどな。さっき部屋から新人のカニバを眺めていたらさ、シモン君がいるもんだからびっくりしたよ。思わず後を付けてきちゃった」
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