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「イカダを作って、島を脱出した人っていないんですか? ちょっと漕いだら本土に辿り着けそうじゃないですか。ここからも見えるし」僕は純粋な疑問を口にした。
「過去に何人もやってるよ。サメの満腹中枢を少し刺激して終わりさ。あいつらの身体能力はどんなに大げさに映画化したって、それを超えてくるよ」
「じゃあ、フェリーを襲ったことはないんですか?」
「過去に数人が挑戦している。そいつらは体中を穴だらけにして、しばらく港を彷徨っていたよ」
「ロメさんの散弾銃で警官たちを撃ち殺せないんですか?」
「難しいよ。遠くから撃っても散弾銃では致命傷にならないし、接近したらしたで先に撃たれる。海に潜って待ち伏せすることはできないし」
「まずはサメを殺すのが先決ですね。毒でもばら撒いて」
「それも色々と考えたんだよ。結局一番良いのは、何もしないでサメを飢餓状態にして最後の一匹になるまで共食いさせることなんだろうけどね。サメさえいなくなれば、泳ぎの得意な奴なら、本土まで帰られそうな距離だし」
「そうですよね」
「連絡船の警官たちもそれを分かってか、毎回島に来る度に、一人二人を海に放り込んでサメに餌をやるんだよ。今日もやってなかった?」
「・・・・・・やってました」頭と鼻から血を流しながら海に落とされた男の顔を振り返っていた。
「あんな残虐な奴らが、俺たちカニバを獣扱いしてるんだから、ギャグだよな」
「食べ物を粗末にするのは良くないです」
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