4章

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「ではさっそく1回戦を始めたいと思います。手斧のセットはいいですか?」ドーム型の檻によじ登っていた男が、親指を突き立てながら滑り降りてきた。  檻の一番高い場所には、鎖につながれた手斧がぶら下がり、揺れていた。  抽選で選ばれなかった人たちの中には、安堵の表情で自分の寝床に戻る者や、吹き抜けになっている2階や3階から身を乗り出して観戦する者など、様々な反応だ。  1回戦目。僕は戦い方を学ぶために、最前列で観戦することにした。20代後半と40代半ばの戦いだ。これからどちらかが死ぬのだ。  僕は今までに何人も殺してきたが、そのほとんどが有利な立場に身を置いたものである。だまし討ちがほとんどで、通り魔的な殺人と言われても否定はできない。  しかし今度は違う。互いに殺意を剥き出しにして、相手の命を終わらせる。戦いにおける美学なんて、そこには必要なかった。正義や悪もない。ただ勝てばいいのだ。  20代の男は水道管のような先の曲がった鉄パイプを持ち、40代の男は拳大の石を数個持っていた。  それを見て、檻のすぐ側で観戦していた者たちが距離を置いた。外れた石が飛んでくるのを回避するためだ。  僕も一緒に後ずさりしていた。
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