4章

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 試合が始まると、40代は全力で一発目を投石した。その速さは周囲の度肝を抜いた。元々野球か何かをやっていたのだろう。  20代はギリギリで回避すると、石は檻に衝突して金属音を刑務所に響き渡らせた。  20代は左右に細かく移動し、照準を絞らせないようにしながら徐々に近づく。  ゴツンという鈍い音が響き渡った。20代は頭から血を流しながら膝をついた。至近距離で避けられるようなスピードではないのだ。  40代がトドメの一発を入れようと近づいた瞬間、今度は鉄パイプが40代のスネにめり込んでいた。持っていた数個の石が床に転がっても、40代は前かがみでスネを押さえたまま拾おうとはしなかった。  その後頭部を狙って、鉄パイプが振り下ろされた。少しのためらいもないフルスイングだ。40代の薄くなっていた頭部が変形していた。そのまま地面に倒れると、カウントが始まったが、20代は攻撃の手を休めず、ついには鉄パイプを頭に突き刺した。 「1,2,3・・・・・・」  周囲の男たちは楽しそうに指を突き出して数えた。大合唱である。きっと大晦日でもここまでは盛り上がらないだろう。  そしてテンカウントされた瞬間に、天井から手斧が落下し、床で跳ね上がった。  20代は手斧を拾い、柄を両手で握りしめると、40代のうなじに向かって落とした。驚くべき切れ味だ。頭部は一発で切断され、頭の下敷きになっていた左腕も一緒に切断されていた。  頭を失った40代の体は、生前よりも元気と言ってもいいくらいに、両手両足をバタつかせ、地面を這っていた。何度か立ち上がろうとするが、平衡感覚は頭部の中に残したままであるため、すぐに倒れた。
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