料理の多い誕生日パーティー

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料理の多い誕生日パーティー

私は気付くと、小さな部屋で鎖で椅子に繋がれていた。 立ち上がりたいが、胴は椅子の背、両足は椅子の足に片方ずつ、 鎖で固定されている為に動けない。 美しく飾られた室内。テーブルの上には私が持って来たプレゼントのバラが 花瓶に活けられていた。 私を閉じ込めたのは、八坂絹江だ。 絹江は私の不倫相手だった。 私は彼女を良いように弄んだ。 彼女を性欲のはけ口とし、時には中絶をさせた事もあった。 絹江は冴えない女だった。34歳で私に出会うまで男も知らず 2人で居ても面白い事も言わない。私が趣味の話や世間の流行の 話なんかをしても、興味を示さないどころか、話を理解すら出来てさえいないように見えた。 つまらない女だった。 でも、都合の良い女だった。 貧素な体だが、ただで性欲を処理できるのは助かった。 きっと、絹江も性欲を処理するだけに私と居ると思っていた。 だが、それは違ったのだ。 ある日、絹江から誕生日パーティーの招待メールが来た。 だが、私はそれを断った。嫌だった訳じゃない。 たまたま、絹江と1人娘の誕生日が同じだったのだ。 なんの因果か、さえない不倫相手と3歳の愛娘の誕生日が同じとはーー 「お待たせ。プレゼントの薔薇ありがとう」 「此処はどこだ!」 「私の叔父の別荘の地下室よ」 「マリを娘を返せ!」 「あなたの為に私が作った手料理を全部食べたらね」 「そんな事で良いのか?」 「そんな事? ええ、いいわ。マリちゃんもあなたも返してあげる」 そう言うと、絹江は部屋を出て行きしばらくして 料理を持って来た。 前菜に始まり、メインディッシュとコース料理のように続き。 スイーツが出された。 呆気ない。これで終わりなのか? これだけが目的なら、こんな事までする必要なんて にだろう。絹江が内に秘めていた異常さをまざまざと感じさせる。
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