料理の多い誕生日パーティー

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あの日ーー、 私が絹江の誘いを断り、帰宅し玄関のドアを開けた瞬間 異常に気付いた。 靴を投げ捨てるように脱ぎ、リビングへ向かう。 テーブルの下では妻が倒れていた。 息をしている。 急いで妻を抱き起こし、頬を数回打つと目を覚ました。 「マリちゃんっ!」 妻は目を覚ますなり、気が狂ったように娘の名を叫んだ。 私は大丈夫だ! と妻を強く抱き締めて言う。 何が大丈夫なのかは分からない。ただ、そう言って宥めるしか無かった。 だがどうやら、命に別状は無さそうだ。 そう思うと今度は、マリが気になる。マリはどこだ? その時、私のスーツのポケットの中の携帯がなった。 着信の相手は、絹江だった。 なんだこんな時に! と思ったが、私は切ろうとした手を止めた。 これを行ったのは絹江だ…… 私は直感的にそう思った。 携帯に出る。 「……もしもし」 「早く来て、マリちゃんも待ちくたびれてるわよ」 やはり、絹江だ。 「お前か! マリを連れ去ったのは!?」 「失礼ね。誕生日パーティーに招いたの。同じ誕生日だから、一緒に祝おうってね」 「お前の要求を言え! 何が目的だ!! 俺との結婚か!」 「いいえ、誕生日を祝って欲しい。そうすれば、マリちゃんを返すわ」 「分かった。今から行くから、一緒に祝うから、マリを返せ」 「うん。プレゼントも忘れずにね」 絹江は嬉しそうにそう言った。
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