1.犬と猫

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1.犬と猫

 わっ、びっくりした。なんだ、コオロギか。  野生の落ち葉を踏みしめ進んでいるとバイオリンを壁にぶん投げたらこんな旋律なんだろうという平たく言ってしまえば何かの潰れる音。そんな音がした。山中をかき分けて、漏れ漏れ漏れる木漏れ日はまだ午前中のような気がする。ここは夢の中といえどケータイも腕時計もないとなると不安ね。  山の中に、電柱が1対。右と左に、ミツバチ柄の電柱。これが電柱なのかも正直言って怪しいけれど、ほとんどの生物は黄色と黒の縞々に危機感を覚えるということもあり、私は確信する。  ここから先は禁断のレイヤー。デンジャーゾーン。  ふ、と。神崎(かんざき)先生が目に入る。先生? 先生かは分からない。ひとまずここでは先生と呼ぶことにする。この容貌で年収1千万であればきょうび芸能人かどっかの皇太子くらいだろう、大方そんなふうな所謂イケメンで、すらっと伸びた四肢は常人のそれをはるかに凌駕する長さ。一歩間違えばチンパンジーとすら比喩されかねないといった具合でギリギリのラインを行っている。     
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