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さりとて私もそう悪い容姿はしていないのだ。名実ともに女子高生、身長はりんご11個ぶん。体重は……まあ巨乳ということで許してくれるかしら。だから、彼から声をかけてくるのは当然のことだったろう。
「さて、ここに捨てられた犬と猫がいます。あなたならどちらを助けますか」
白衣に手を突っ込みながらさして興味もなさそうに――まるでアリの行列を見守る子供の手を引く親のように――神崎先生は問う。
「禅問答ですかね。そんな、先生ふうな格好をしておいでだ。住職ではないように見えますが……ほら、髪だってボウズじゃなくて短髪に切りそろえちゃってさあ」
「答えよ」
スフィンクスか。
容姿はいいものの性格に難あり、といったところか。まあ、なんといいますかそのポケットに突っ込んだ指からはなんら貴金属類の光沢が見て取れないんだろうし今なら金属探知機をすっと通れるんだろう、彼は。
高貴な目鼻立ち、立ち振る舞いでもポッケに手を突っ込んでいるだけでなんて卑しく見えるのだろう。貴賤に問わず、乙女の眼の前でこう云う素振りはやっちゃいかんよ。合コンでケータイばかり触る女子だって、あなた嫌でしょう? カラオケで選曲機ばかり触って歌を聞いてくれないのも嫌でしょう?
「スフィンクスか」
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