2.路地裏

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 相変わらず雑木林の中を歩いていた。暗闇の中を神崎先生の懐中電灯だけが照らしていて、当人の顔と言えば眼鏡に光が反射してしまってどういう表情なのか読み取れないけれど。 「先生、あれ」 「うん?」  後ろに見えるミツバチ柄の電柱を指差す。 「あれは、なに?」 「ただの電柱だよ。取るに足らないただの電柱。君の生活には何ら関係のないただの電柱さ」 「ちがう、あの下の、ダンボール箱」 「それは」  先生は小脇に抱えた子犬と子猫の亡骸を――種類は分からない、犬と猫の概念と呼ぶにふさわしい2頭の容れものを私に見せ、言った。 「君の救えなかった命でもなんでもない、ただの新しかった命だよ。なに、救えなかったと言っても気に病むことはない。これはもともとこう使うものだから」  息絶え力尽き枝にしがみつくことかなわなかった葉の一枚一枚、断末魔を上げて私の靴へ縋っている。先生の白衣にオナモミが突き刺さって、新天地を求めている。コオロギがバイオリンを弾いている。季節感、現実とリンクした風景に私は恐怖心を隠せず先生の腕にしがみついた。 「先生、怖い」     
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