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「はい、とても気に入っているので」
遠藤はそっとその手袋を外すと俺に見えるようにカウンターの上に置いた。
着ていたコートはバーテンがクロークに預かる。
「これは……すごいな」
俺はその手袋を手にして、その革の薄さとしなやかさに驚いた。
間違いなく革の手触りなのに、まるでシルクの手袋の様に薄くてしなやかだったのだ。
「俺は手袋のごわついた感じが苦手で、寒くても手袋をしないんだが……これはまるで吸い付くようにしなやかで手に違和感が無い」
「お褒めに預かり」
遠藤はそう言うと俺の隣に腰かけて、バーテンにラフロイグをオーダーする。
「手袋は革が一番です。身に着けるモノでも特に鋭敏な器官を持つ場所を保護する物は革が一番だと思います」
そう言いながら遠藤は俺の手から手袋を片方だけとりあげると、自分の手にするっとはめてみせた。
手袋をはめた左手だけが黒く染まったように、しっとりとその手に手袋が馴染む。指を動かすと細かな刺繍が上品に光沢をみせる。
俺は思わずその手を握ってしまった。
その感触は人の素肌に触れているような自然な風合いなのに、何故かひどく艶めかしく吸い付いてくるようだ。
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