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「そんなことをして大丈夫なのか? 折角の皮の手袋が」
それ以前にあんなにドロドロに汚してしまったわけだが、少なくとも革の手入れは水道でじゃぶじゃぶと洗えるようなものではないはずだ。
「あなたは余程この手袋が気に入ったみたいですね」
遠藤が穏やかな顔で微笑む。
ベッドの中でみたあの挑発的な感じはすっかり影をひそめていたが、この整った顔に穏やかな笑みが浮かぶと何だか作り物の様でうすら寒さを感じる。
「俺も同じ手袋が欲しいくらいだよ」
「良いですね。覚悟があればこれを仕立てたのと同じ仕立て屋を紹介いたしますよ」
「覚悟……ねぇ。やっぱりそれはそんなに高価な品なのか?」
「そうですね。そうやすやすと作れるものでもないです。美しいモノは多分一生に一双」
「一生に一双?」
そんなにバカ高い代物なのかと目を瞠ると、遠藤は変わらぬ笑顔で言った。
「ええ、人間の皮ですから」
「……え?」
「人間の背中の皮を使うんです。一度剥いでしまえば、そこにはもうケロイドが出来てしまい、美しい肌には二度と戻らない。ただ一生に一双分だけ」
ゾッとした。人間の背中の皮?
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