2/2

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 どうやら、肉体的にも精神的にも疲れ果てていたらしい。コーサクは深い眠りについていた。  眠りから覚めて目を開けると、そこは、タバコの臭いが染みついた休憩室の中だった。 「やっと目を覚ましたわ、アンタ」 「お、よく眠ってたな、お前」  眉毛の濃い、オールバックの男性と、先程彼を助けてくれた団子頭の女性が、にこやかにコーサクを見た。コーサクは不信そうな顔つきで二人を見たが、二人は気にせず笑っている。 「お前もなんかあった奴なんだろ?」 「俺は違う! 冤罪だったんだ!!」 「でも、認めちまったんだろ? お前も」 「お前も……?」  コーサクが疑問符で返すと、男性は笑う。大丈夫、そう言わんばかりに。 「俺の工場……いや、この商店街には、そう言った奴らが沢山いるよ。中には、本物の悪もいるがね。って、お前なら知ってるだろうけどな」  男性は笑いながら、コーサクの切れた口元をつついた。コーサクは痛そうに顔を歪める。 「行く当てが無いんなら、うちで働くと良い。丁度、人手が足りなかったんだ……どうだ?」 「俺なんか、何したって……」 「そう卑屈にならないの。そんなんじゃ、改まって家族に顔向け出来ないわよ」  女性に言われると、家族の顔を思い出した。冷たくあしらわれた妻ショーコ。そして、もう一人。 『私は父さんを信じてる!!』  そう言ってくれた、娘サヨのことを。 「俺が、会えるわけない……」 「そんなことない! ちゃんと生きていれば、きっといつか会えるようになる日が来るわ!!」  女性が、コーサクの手を握って目に訴えかける。男性も、彼を見て、静かに頷いていた。  二人に訴えかけられると、何だかそのような気がしてきた。励まされて少しだけ前向きになれたコーサクは、こくっと頷いた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加