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 家の前でパトカーが止まると、何事かと騒がれて、またもや二人に迷惑をかけると思ったので、コーサクは少し離れた場所で止めてもらい、頭を下げて歩きだした。しかし、口や額から出血する彼の顔を見て、少々不安がる人々もいた。そんな視線も気にせず、コーサクはひたすら歩いていく。  家の前に到着し、ドキドキと高鳴る胸に手を当てて深呼吸。そして、その後チャイムを鳴らした。 「はぁい」  妻の柔らかい声が聞こえて安堵したのも束の間、カメラから姿を見るや否や、「あら……」の声色を低くした。  返されるだろうか。不安になりながらも待っていると。すぐに扉が開き、手首を引かれ、中へと引きずり込まれた。 「何しに来たのよ」 「今日はサヨの誕生日だろう。せめておめでとうだけでも言いたかったんだ」 「……他に言うこと、あるんじゃないの」 「他に?」  ショーコはコーサクの手首を引いたまま、今の椅子に連れていき、椅子に座らせた。その後手を離すと、棚の方へと移動し、棚の上に置いてあった救急箱を取り出す。そこから取り出した応急処置の為の道具で、彼の怪我を手当てする。 「今日、ニュース見たわよ」 「ああ。愉快犯だってな」 「あんな馬鹿みたいなのに、あたし等人生滅茶苦茶にされた。サヨもね」 「……すまん」 「……そう、思ってたの」  口元の傷を消毒液で濡らした綿を付けながら、ショーコは言葉を続けた。 「けどね、サヨはまるで違った。ずっと信じていたの。貴方のこと」 「サヨが?」 「ええ。あの子が毎日、まるで貴方の代わりのように父さんは無実だ! って訴えるから、私までそんな気がしてきて」  ショーコの言葉を聞くと、やがて、サヨを思って涙ぐんだ。 「ただいま」  サヨの声だ。サヨの声を聞いた瞬間、コーサクは急いで玄関に向かった。 「サヨ!!」 「と、父さん!? どうしたの、その顔……大丈夫」  サヨが玄関に入った瞬間、コーサクは泣き崩れた。ただでさえボロボロの顔が、涙で更にボロボロになる。サヨは突然の父親の登場にも驚くことなく、彼のことを心配した。 「サヨ、捕まったのよ。犯人が」 「本当に!? 良かったねぇ、父さん!!」 「サヨ……今まで迷惑かけてごめんな。ショーコにも」
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