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 彼は、ただ己の職務を全うして帰って来ただけの勤続四十年目のサラリーマンだ。犯罪など、何もやってはいない。 「冤罪だ!」 何度も訴えたが、警察がコーサクの発言を肯定することは一瞬たりとも無かった。  それでもコーサクは、自分の発言を変えることは無かった。警察の、あの常套句を聞くまでは。 「お前、娘さんの誕生日があと二か月も無いそうじゃないか。やったと言えば、出してやれるぞ」  この、悪魔の囁きにコーサクの心はぐらついた。そして、とうとう重たかった頭を縦に振った。
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