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「たまに撫でたくなるし」
「な、なで」
さっとトウマの耳に赤味がさすから、「毛色が似てる」と付け加える。変な意味ではない。
「俺はイヌじゃねえ」
「知ってる」
「…昼飯、たまにだけど一緒に食べるだろ」
「ああ?」
「この間、映画も観に行ったよな」
「そうだな面白かった」
「…だから、友達だろ!」
「なるほど」
喉元に込み上がる笑いをどうにかこらえた。
友達の確認ってなんだそれ。
「俺に謝れ!」
謝る必要性があるとは思えないが、「ごめん」と言っておく。
「誠意が足りんっ」
「ごめんなさい」
「口先だけだな、もういいよ!」
何でこんなに必死なんだろう。
「サクラって名前だったんだ」
早足で先を急ぐ背中に向かって言い訳するように言っていた。
「は?」
こちらを振り向き首をかしげる仕草が、やはりサクラに似ている。
「犬の名前」
「知らねえよ」
「これで覚えただろ。知っといて、友達なら」
そっか、友達でも好きとかあるんだな。
…
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