黒川晃(40)

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勘弁してくれ。 お世辞にも綺麗とはいえない奥さんと、冴えない顔した男のラブシーンなんて、朝っぱらから気色悪いだけだ。 「おはようございます。」 すぐ後から、先ほどの冴えない旦那が急ぎ足で俺を追い抜いていく。 すれ違いざま挨拶をされたが、俺は下を向いたまま聞こえないふりをした。 めでたいヤツめ。 思えば、少し前までは茜も、出かける前には必ず行ってらっしゃいのキスで見送っていた。 茜は愛情表現豊かで、とにかく犬みたいにまとわりついて来るタイプだった。 それはそれで嬉しくもあり、煩わしくもある。 ただ、今となっては、アイツのその行動は演技だったのではないかと疑っている。 女ってのは、結局、男をATMとしか思ってない。 結婚して、子どもが出来て、自分の地位が安定すれば、そこから本性を現すんだ。 「分かってないですねぇ」 突然頭上で声がした。 「女心どころか、人の心がわかっちゃいない」 人が浮いていた。 背中には大きな白い羽を生やしている。 コスプレか? 最近のコスプレは飛べるのか? 男か?女か? 全てがよくわからないが、まるで彫刻のように整った顔をしている。 美しい顔だが、ヤバそうなやつには関わらない方が良さそうだ。 「おやまぁ。失礼ですねぇ」     
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