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勘弁してくれ。
お世辞にも綺麗とはいえない奥さんと、冴えない顔した男のラブシーンなんて、朝っぱらから気色悪いだけだ。
「おはようございます。」
すぐ後から、先ほどの冴えない旦那が急ぎ足で俺を追い抜いていく。
すれ違いざま挨拶をされたが、俺は下を向いたまま聞こえないふりをした。
めでたいヤツめ。
思えば、少し前までは茜も、出かける前には必ず行ってらっしゃいのキスで見送っていた。
茜は愛情表現豊かで、とにかく犬みたいにまとわりついて来るタイプだった。
それはそれで嬉しくもあり、煩わしくもある。
ただ、今となっては、アイツのその行動は演技だったのではないかと疑っている。
女ってのは、結局、男をATMとしか思ってない。
結婚して、子どもが出来て、自分の地位が安定すれば、そこから本性を現すんだ。
「分かってないですねぇ」
突然頭上で声がした。
「女心どころか、人の心がわかっちゃいない」
人が浮いていた。
背中には大きな白い羽を生やしている。
コスプレか?
最近のコスプレは飛べるのか?
男か?女か?
全てがよくわからないが、まるで彫刻のように整った顔をしている。
美しい顔だが、ヤバそうなやつには関わらない方が良さそうだ。
「おやまぁ。失礼ですねぇ」
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