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「老ぼれで良ければ、協力しましょう」
「ありがとうございます」
黄色が上着の内ポケットからスマホを
取り出し、ボイスレコーダーアプリの
録音ボタンを押した。
デスクの上に置いていたデスクトップ
パソコンを観ながら。
「もうすぐ私も本を出版しようと
思いまして、現在その準備を急いで
いるところです」
「それは、何でしょうか?」
思わず、黄色が身を乗り出す。
「モーツァルト親子の大旅行なんですが
果たして音楽学習だったのか、甚だ疑問
なんですよ」
「と言いますと?」
山岸が、キーボードのボタンを押すと、
ディスプレイにモーツァルトの肖像画が
表示された。
「モーツァルト親子は、パリ、ロンドン、
イタリアと何年も掛けて、馬車で
欧州縦断旅行をしている訳ですが、
その費用はどうしたのでしょうか?」
山岸の問いに、黄色が言葉を詰まらせる。
「父親も宮廷楽団のメンバーですが、
それらはサラリーマンにしか過ぎません。
イタリア旅行の時などは、3年間も
楽団を休んで旅行を続けていたのです。
収入は何処にもありません」
「父親に資産があったとか?」
山岸が向き直り。
「レオポルトは、資産家の生まれでは
ありません。3年間旅行を続けるには
莫大な資金が必要です。となれば、
誰かに拝借しなければなりません」
「ということは、提供者がいたと?」
山岸が、大きく頷く。
「おそらくザルツブルク大司教の
ヒエロニムスコロレド伯爵でしょう」
「けれども何故、大司教がモーツァルト
親子に眼をつけたのでしょうか?」
黄色の問いに、山岸の瞳が輝く。
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