第1章 モーツァルトはスパイ?

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「アマデウスモーツァルトの特殊能力に 目をつけたのではないか。 最初に気づいたのは父親のレオポルト、 それで彼は神様の思し召しとして、 涙を流しながら喜んだ」 スマホのメモアプリに、文字入力を 繰り返す黄色。 「神様が、奇跡を与えてくれたと?」 「そうです、特殊能力というのは モーツァルト自身が高感度なマイクが付いた ボイスレコーダーだったと。その機能は ミドルレンジというよりは、フラグシップ モデルと考えた方が良いかもしれません、 かなりのハイスペックだったと思います」 黄色がキョトンとした表情で、講師の 瞳を見詰めている。 「それは、どういう意味ですか?」 「それは後で話しますが、モーツァルトの 幼少時代、オーストリア継承戦争 から7年戦争と立て続けに戦が起きてそれが 終わったばかりの頃、欧州はハプスブルク 帝国とプロイセン王国に別れての戦争に、 最大のストレスフルな緊張状態に陥っていたわけです。 とても、貴族や国民が気楽に旅行出来る ような環境では無かった筈です。 しかし、モーツァルト親子だけがそれを 可能にした」 「確かに、当時国境越えには2-3日の 足止めは当たり前だった筈が、 モーツァルトのヴァイオリン演奏によって 10分で通過出来たと」 山岸が、大きく頷く。 「当時の状況を鑑みれば、自由な交通手段 など無かったはず。とすれば、予め 国境検問所との折り合いがついていた」 親子が、アグレッシブに旅行できたのも、 大司教の後ろ盾があったからだろう。     
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