第1章 モーツァルトはスパイ?

5/10
前へ
/10ページ
次へ
山岸が、パソコンのキーボードを押すと コロレド伯爵の肖像画が出てきた。 「すると、先生の考えでは大司教が モーツァルト親子にスパイの命令を?」 「それは間違い無いでしょう、では一体 何故大司教がモーツァルト親子をスパイに したのか?」 もう一度パソコンのキーボードボタンを 押すと、今度はマリアテレジアの 肖像画が。 「1762年、ハプスブルク帝国の女帝 マリアテレジアとマリーアントワネットの 前で、モーツァルトは演奏した。 料理人は一歩も、厨房からは出られま せんが、音楽家は違います。 音楽家は、国王の傍にいても許される 存在」 「という事は、モーツァルトが貴族や 国王の会話を記憶していたと?」 黄色が、山岸の表情を伺う。 「モーツァルトにとって、ピアノを演奏 しながら周りの声を聴き分け、正確に 記憶する事など容易いことだったと。 演奏後の部屋において、息子から全ての マルチメディアコンテンツデータファイル を聴き出し、手紙に書いてコロレド伯爵に 送ったのではないか。 現存している手紙は表向きで、伯爵に 送った手紙は既読直後に隠蔽。 これが、親子にとっての大司教に対する ユーティリティだったのでしょう」 慌てて、文字入力する黄色。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加