第二章 立てこもり

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萌が出勤してきているのか気になってしょうがなかった雄二は、萌の友だちのふりをして総務課に電話を入れた。萌は休暇を取っているということだった。 その日雄二が部屋に戻ると、部屋はひっそりしていた。クローゼットをノックしても何の反応もなかった。力尽くで戸を開けようとしたが、固くてビクともしなかった。 よく見ると、扉に数十個の釘が打ち付けてある。雄二は驚いた。これはどうしたことだ。 一体誰がやったのか。それはどう考えても、萌の仕業に違いなかった。雄二はクローゼットに頬を押しつけ、中にいるかも知れない萌に声を掛けてみた。そして、雄二は全身汗まみれになり、不快さに我慢できなくなるまで話し続けた。どうやら中に萌はいない模様だった。とすると、一体何のためにクローゼットに釘を打ち付けたのだろうか。考えても雄二にはさっぱり解らなかった。考えられるとしたら、萌がこれから別の道を通ってこの中に出入りするつもりなのではないかと言うことだった。とすると、これは自分に対する宣戦布告に他ならない。雄二はぞっとした。萌はここに住み着くつもりなのだろうか。 雄二はいても立ってもいられなくなった。もしかすると、天井裏から逃げ道があるかもしれない。雄二の部屋は平屋建てのアパートの西の端である。クローゼットから天井裏に出て、そこから天井を伝って東の端に出れば、どこかに出口があるのかもしれない。 アパートに沿って平行に伸びている道路を、雄二は行ったり来たりしてアパートの外観をじっくり観察した。屋根裏から表に出る抜け道はないかと。しかし、そのような出口は見当たらなかった。
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