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「私が他の人と違うなって初めて感じたのは、小学3年生の時。お婆ちゃんが亡くなった時だったんだ。」
みのりは明るいオープンテラスの一角で、温かいハーブティーを少しずつ、味わうように飲みながら話し始めた。
「お婆ちゃんは一緒に住んでいてね。亡くなる1ヶ月前に自分の部屋の掃除をしていたんだ。私がたまたま通りかかった時、何か懐かしむように1枚の写真を眺めていた。私は思わず、『お婆ちゃん、何見ているの?』って話しかけたの。」
初春のやや暖かい風がオープンテラスを吹き抜ける。
その風がハーブの香りを乗せて心地よくさせる。
「そうしたね、お婆ちゃん、『これお爺ちゃんとの結婚式の写真だよ。』って見せてくれたんだ。写真の裏側には日付が入ってた。昭和42年9月23日。もう50年以上、昔の写真。まるで古代の王様が座るような大きくて真っ赤な椅子が真ん中にあって、そこにお婆ちゃんが座っていて、その後ろにお爺ちゃんが立っているの。お婆ちゃんの右肩にそっと手を乗せていてね。お婆ちゃんは淡いピンク色の着物を着ていて、お爺ちゃんは黒の袴姿。凄く素敵な写真だなぁ、って思って見ていたの。」
にこやかに話していたみのりだったが、ここまで話すと、優しいハーブの香りが漂うティーカップを手に取り、そっと口に近づけると、今度は少し寂しい表情をして再び話し始めた。
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