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「も、もうダメだぁああ!撤退するぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!勝手に持ち場をアギャっ!?」
武器を投げ捨てて逃げ出す騎士風の男に、一瞬だが視線を奪われてしまう女性魔術師
そんな彼女の眼前に迫った棍棒が、鳩尾に深々とめり込む
そのままの勢いに乗って、まるでトラックに跳ね飛ばされたボールのように宙を舞う
放物線を描いて空中遊泳をする魔術師であったが、その体が地面に着くことはなかった
代わりに、花火の如く飛び散った虹色のかけらが、名残惜しそうに舞仕切っていた
その様子を目撃していた巡礼者達が我先にと出口を目指す
男も女も、老いも若いも関係ない
この場にいたほとんどの者がボス部屋の入口を目指し、先頭を走る男が扉の取っ手を掴む、まさにその瞬間
凄まじい地響きと共に着地したボスの巨体によって、彼の体が一瞬で弾け飛んでしまう
訳も分からず、呆然と立ち尽くしてしまう一同
さっきまで後ろにいたボスが、なぜ…?
振り上げられた棍棒をぼんやりと見つめていた男は、胸中で同じ疑問を繰り返していた
その行為は、叩きつけられた棍棒が男の頭部をカチ割るまで続いたという
この日、初の深淵ダンジョンボス攻略に乗り出した巡礼者の数は、総勢32名
意気揚々と乗り込んでいったダンジョン攻略はーー
これと全く同じ数のプレーヤーが、マッシュオークキングの棍棒の錆となる結果となった
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