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「千賀谷くん、おはよう。」
「食べない。」
「携帯は持ってるけどあなたに教えるアドレスは持ってない。」
あくまでも冷たく、ゴミ虫を見るように相手をする。きっとそのうち心が折れて私に絡まなくなるだろう。本当は完全に興味を失ってもらうために一般女子のような黄色い声を上げようとしたが、どこまでも正直な表情筋が彼に対して媚びを売るような笑顔を浮かべるのを全力拒否したため断念したのだ。誰かに媚びうるとか、黄色い悲鳴を上げるとか、無理だ。柄じゃないにもほどがある。
すでに完落ちしているヒロインたちだけで満足すれば良いものを、物珍しいと言わんばかりに私にも寄ってくるウルトラスーパーパーフェクトイケメン男子高校生。不愉快以外の何者でもない。
「松岡さん!今日の放課後空いて、」
「暇だけどあなたために割く時間はない。それじゃ。」
生ごみに湧くウジ虫を見るような目で一方的に話を切り上げる。だがこれでめげないのが千賀谷李人だ。どうせ明日も性懲りもなく私に構ってくるのだろう。
千賀谷李人の心が折れるか、松岡百合の心が折れるか。
彼が私の態度に耐え切れなくなり諦めるか、私が彼の態度に耐え切れなくなり転生者であることを吐くか、二つに一つだろう。どこまでもくだらない我慢対決。
そんなこんなで、今日も今日とて平凡転生少女の私はチート転生男子の千賀谷くんを腐った生ごみに群がるゴミ虫を見るような視線を浴びせている。
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